おもちゃのマシマ


先日、いつもと違った最寄りの駅を使って帰ることがあった。
幼稚園があった街で、久しぶりに商店街を通った。


小さい頃いつもお世話になっていたおもちゃ屋さん
「おもちゃのマシマ」が、閉店していた。


閉店したというのは聞いていたけど、
いざ閉店した店跡を目の当たりにし、
「長年のご愛護ありがとうございました」という看板には
やはりぐっとくるものがあった。


マシマのおじさんは、私のサンタさんだった。


幼稚園の頃、完全にサンタさんを信じていて、
パーマンセット(正確にはパー子のセット)」をお願いした。


それを聞いた母親は、マシマにパー子セットを買いに行った。
当時パーマンセットは大人気で、マシマでは売り切れ、
取り寄せると確実にクリスマスは過ぎてしまうようだった。


困った母親は、私を連れて、マシマへ行った。
何気なく、「あれ、パーマンセット、ないねえ。」と言い、
奥からでて来たおじさんは、
「そうなんだよ。さっきサンタさんも買いに来たんだけどね、
売り切れだったから残念そうに帰って行ったんだよ。」と。


その時母親とおじさんは打ち合わせをしたのかしなかったのか、
今も分からないし聞くつもりもないが、
何故か私はとっても納得がいった。
ダダをこねる子ではなかったハズだけど、
その時はがっかりして悲しくなったりもした記憶はない。
「私のために、サンタさんがおもちゃ屋さんに来てくれた。」
それだけでとっても嬉しかった。
だから鮮明に、おじさんに説明された時の「図」を覚えている。


マシマが閉店して、「ありがとうございました」の看板を見た時、
瞼の裏に映ったのはその時店先に立っていた
母親とおじさんと私、の「図」。
三人の位置も、その時耳に聞こえていた音も、色もカラーで思い出せる。


それから更に5年程度はサンタさんを信じ続けたのも、
サンタさんが私のために確実に動いていたと、
教えてくれた人がいたからかもしれない。


あと・・・私のサンタさんは、毎年手紙も書いてくれた。
あれは絶対本物だと思った。
最後に必ず、ミミズのようなサンタさんのサインがあったから。


今まで生まれ育った街から、思い出がひとつずつ無くなっていく。